目次

1.なぜ中高一貫制度ができたのか?
2.どんな検査(試験)なのか?
3.中学生活はどうなる
4.結論(倉橋の意見)

1 なぜ中高一貫制度ができたのか?

1.中高一貫教育の導入のねらい

愛知県のHPに、中高一貫制度のねらいが書かれています。受験を考えられる方は、読んでみてください。
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/life/454544_2070547_misc.pdf
要約すると、
現在は、将来の予想が難しい社会になっています。みなさんは、この時代を切り拓くチェンジ・メーカーになってほしい。中高一貫校では、「勉強、勉強」とは言いません。高校入試もなく、みなさんにゆとりを与えます。そのゆとりの中で、いろいろなことにチャレンジして、人と仲良くやりながら、あたらしい道を切り開いてほしい。

◆なぜ中高一貫制度が始まったのか?(倉橋の感想) クリックすると表示

大学入試でも、総合型選抜(旧AO入試)を取り入れるところが広がっています。中高一貫のねらいは、総合型選抜と同じです。

従来の、日本の学力重視の学校制度だと、大学に行くまでは、日常生活の楽しみも抑えて猛勉強し、大学に入ると、反動で遊んでしまう。結果、社会に出ても優秀な成果を出せないという、弊害がありました。
片や、世界の大学(欧米など)は、中学や高校は、楽しく日常を送りながら勉強し、大学に入っても、楽しく日常を送りながら勉強する。社会に出てからも、優秀な成果を出します。日本も、世界の大学の良さを取り入れたいという考えで、総合型選抜(旧AO入試)が取り入れられるようになった。倉橋は、そう解釈しています。

具体的には、生徒側は、自己分析をしっかりして、学校に入ってしたいことをちゃんと考え、学校側に志願理由書や自己PR書を提出する。学校側からも、「こんな子に来てほしい」という方針を提出する。お互いで面談をして、お互いがOKとなったら入学する。こんな流れです。

愛知県の中高一貫制度の導入も、この流れに沿っています。

2.どんな公立学校で、中高一貫制度が導入されるのか?

第一次は、2025年に明和や刈谷など4校で実施されました。第二次は、2026年に豊田西や時習館など6~7校で実施予定です。
各学校が目指す教育(アドミッション・ポリシー)は違うので、興味のある方は、資料を見ましょう。
資料
・第一次 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/480452.pdf
・第二次 https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/534327.pdf 

なお、2025年実施の倍率は、明和17倍、刈谷10倍です。
資料
・倍率  https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/541098.pdf

◆今後も、この高倍率が続くのか?(倉橋の感想)  クリックすると表示

ブランド力の高い学校で、まだ中高一貫制度にマイナスのイメージはないので、次年度も、倍率は高いと思います。先行して実施している東京都の中高一貫校の倍率は、現在は3倍前後なので、やがては、そのあたりに落ち着くと思います。17倍は高いですが、受験生の中には、「受かればラッキー」と、ちゃんと対策をしてきていない子も多いと思います。しっかり対策をすれば、勝負はできるでしょう。

2 どんな検査(試験)なのか?

まず、適性検査(試験)をします。45分の検査が2回あります。ここで、定員の2倍程度に絞られ、数日後に、面接(1人15分)があり、入学者が決まります。

1.適性検査(試験) 

実物が、愛知県のHPにあるので、ぜひ解いてみてください。
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/aichi-manabi/r7-tekiseikensa.html

試験の特徴
・長文
・いろいろな教科を混ぜこぜにした総合問題
・初見の資料や説明を読んで、その場で考えて解く問題
・小学校の内容を逸脱していない。(中学受験型問題とはちがう)
・全問、選択式問題で、記述問題は無い。

資料:入試分析サイト
・受験をした子のようすが分かりやすい(名進研)。https://nagoya-life.nagoya/?p=8616

◆試験対策をどうするか?(倉橋の意見)   クリックすると表示

適性検査を受けた子どもは、おそらく「難しい!」と感じています。
小学生が、短時間で、この分量の文章を読んで、考えて答えるのは、相当のスピードと底力が必要です。
問題内容も、進学塾でやっている中学受験対策の問題とは、かなり違います。

1.この問題である程度の得点力を得るためには、国語力が必要です。私見ですが、適性検査とあるように、この問題を解けるには資質が必要だと思います。過去問を解いてみて、「まあ半分くらいはできるな」と思えれば資質はあります。「全然だめ」「解く気も起きない」となれば、私立中学受験や一般の公立中学に向いています。自分が、公立の中高一貫に向いているかどうか、過去問を解いて、チェックしてみましょう。

2.中学入試問題とは違うので、6年生の1年間の勉強でも、資質がある子は間に合います。私立中学入試は、小4(小5)あたりから、長期にわたって勉強漬けの日が続きますが、公立の中高一貫校は、資質があれば、1年間真剣に勉強すれば間に合うのは魅力的です。

3.明和高校附属中学(普通科)80名の内訳が、塾の資料でわかっています。名進研・日能研・浜学園・京進などの、中学受験塾の生徒が大半を占めています。私立中学を受けながら、明和も受けて、受かったから明和に進んだということです。ただ、誤解は避けたいのですが、「中学受験塾に行かないと、公立中高一貫校に合格しない」という意味ではありません。私立中学と中高一貫校では、明らかに問題の質が違います。
中学進学塾が、合格者の大半を占めたのは、・積み上げてきた勉強量が多く、頭の回転が速くなっている ・テスト慣れしている ・初見の問題を解くことに慣れている ・ふだんからミスを減らす練習をしてきている ・時間配分がうまい などの理由と考えられます。これが自分でできるのなら、中学進学塾に行かなくても、中高一貫校は合格できます。事実、ラボの生徒でも、本人まかせで進研ゼミだけやって、塾に行かずに合格した子もいます。→進学のようす2025

ただ、準備もせずに合格はできません。中高一貫校の対策問題集も出ています。受ける人は、ちゃんと対策して受けてください。

参考資料(中高一貫校対策問題集)

6つのプロセスで分類した 公立中高一貫校対策問題集 改訂新版  みくに出版

公立中高一貫校適性検査対策問題集 東京学参

2.面接

面接官が、生徒が提出した志望動機書を見ながら質問をします。ひとり15分程度。

新学習指導要領では、自ら課題を立てて、情報を整理・分析し、自分の考えを実現する「探究学習」を重視しています。
面接も、それに沿って行われます。以下のような突っ込んだ質問がされることもあります。
・探究がうまくいかなかったとき、どう対処したのか?
・仲間と意見が合わなかったときは、どうしたのか?

◆面接の対策は?(倉橋の意見)   クリックすると表示

1.志望理由書が大切です。自分の探究活動を練りこんで書く。また、中学では、こんなことをやってみたい。そのためにこの学校に入りたい。自分が何をしたいのか、しっかり考えて、志望理由書を完成させましょう。中途半端な志望理由書では、面接官は大人なので、突っ込んできます。浅さがバレてしまいます。

2.志望理由書は、第三者に添削してもらう。何度か書き直すことになりますが、頑張りましょう。

3.模擬面接をしてもらいましょう。倉橋も模擬面接官になるので、必要であれば連絡ください。インターネット上に、どんな質問を受けたのかはたくさん載っています。保護者の方は情報収集をお願いします。面接対策は、中高一貫校の例で良いのが見つからないので、高校入試や大学入試の面接ポイント動画を参考にしましょう。役に立ちます。
参考 
https://www.youtube.com/watch?v=cL7w4_7_1qw 高校入試の面接(にしむら先生)

https://www.youtube.com/watch?v=yEQQTmOgzbs 総合型選抜に特化した塾AOI

3 中学生活はどうなるの?

1.学習進度

私立中学の進み方とは違います。

私立の中高一貫校は、入学すると、どんどん先に進み、中3には高校内容に入っていきます。東海や滝など、高校から1クラス募集するところもありますが、募集したクラスは、主要教科は1年間別クラスで学び、高2で合流していきます。

愛知県立の中高一貫中学は、先取り学習はしません。一般の公立中学と同じ進度で進みます。ゆとりを作って、それを、もっと深い勉強や探求学習に当てていく方針です。高校生になるときに、一般受験で入った子たちと合流し、その子たちと一緒に勉強します。このあたりの方針は、愛知県の資料に出ています。
参考:愛知県における中高一貫教育制度の導入について 

2.どんな先生が担当するの?

中学や高校の免許を持った先生が担当します。

3.部活はどうなるの?

一般に、中学の部活は、廃止傾向にあります。公立中高一貫校での部活は、高等部の部活に合流するか、地域の活動に参加するかのどちらかになりそうです。

◆まだ、見えないこと。(倉橋の懸念)   クリックすると表示

1.探究学習ってどうやるの?

先生たちは、教科を教える専門家です。
「探究学習」が大切なことはわかっても、どうサポートするのか?
先生は、トレーニングされているのでしょうか?

また、愛知県の資料では、
・大学や企業と連携した深い学び
・スーパーサイエンスハイスクール
・国際交流活動
など、いろいろな試みがされるようですが、どう具現化していくのでしょうか。
方針は立派ですが、実際の運営のしかたが、まだ見えません。

2.カリキュラムが現場任せ

新制度にするとありがちですが、大枠は上が決めて、詳細は現場が決めます。
カリキュラムも大枠は、
・公立中学と同じ教科書を使い、必要に応じて補助教材を使う。
・6年間を見据えた、指導をする。
と決まっていますが、具体的なカリキュラムをどうするかは、現場の先生まかせになります。

おそらく、優秀な先生たちが集められます。
しかし、先生たちも、初めて顔を合わせて、慣れない指導現場で、6年間の計画を立てて、補助教材を作り続けながら、共同歩調をとる。

それでいて、先生の給料は、年齢によってほぼ一律に決まっています。
先生たち、たいへんそうです。

3.授業を先取りしなくて大丈夫か?

一般の私立中学は、6年一貫カリキュラムなので、中学の内容は2年までで終え、全カリキュラムも高2で終えて、あとは受験勉強です。

しかし、愛知県の公立の中高一貫校は、先取り学習はしないと公言しています。
かなり優秀な子が集まるので、公立中学校と同じ教科書を使うと、早々にできてしまうと思われます。余った時間は、先生が補充問題を用意したり、探求学習をしたりする。
霧の中を模索しながら進むような「見えなさ」を感じます。

高1になると、外部からたくさんの子が入ってきて合流します。
結果、高3になっても、まだ教科書が終わっていず(例えば数Ⅲをやっていて)、平行して受験勉強をする。私立より、進度がおそい。
これで、私立の学校と、大学受験で戦えるのか?不安があります。

もちろん、しっかりとした子は、自分でやっています。
また、公立中高一貫の生徒は、大学の総合選抜入試では、強みを発揮するでしょう。

自分をしっかり持っている子は大丈夫ですが、まわりに流されるタイプの子は向いていないと思います。

4.中だるみをどうするのか?

一般の公立中学は、中2あたりで中だるみが起きますが、中3の受験となると、みんな必死で勉強します。
高校に入ると、また途中で中だるみしますが、高3になると、もう必死で勉強します。
結果、子どもたちは、ある一定の学力差内に収まります。

公立の中高一貫校は、入学すれば、次の受験は6年後です。中だるみしないのでしょうか?

先行して実施されている、都立の中高一貫校では、中だるみは起きています。
勉強する子はしますが、しない子は・・・。
結果、大学受験時に、上位と下位で大きな差になる問題が起きています。



4 結論(倉橋の意見)

国語が得意、本を読むことが好きならば、公立の中高一貫校は受ければよいと思います。理由は以下です。

1.1年の勉強で勝負できる

中学入試が、3年間の勉強漬けになるのに対し、公立の中高一貫校は、資質がある子は、1年間本気で頑張れば太刀打ちできます。

2.検査(試験)対策が勉強になる

適性検査は、知識の勝負ではありません。初めて見た変わった問題が出される。落ち着いて読んで、考えて、答えを出す。
この練習は、社会に出てからも役に立ちます。

3.自分を振り返ることができる

一般の中学・高校と進むと、日々の勉強でバタバタして、自分を振り返る余裕もありません。自分が何をしたいか考える余裕もありません。
大学に入って、はじめて「自分は何をしたいんだ?」と考える子が多いです。

公立の中高一貫校の場合、最初の志望理由書を書くときに、自分を振り返り、自分のやりたいことを考えます。
また、入学した後も、6年間の余裕をもらえるので、その間に、いろいろな人に会って、いろいろなことを考えて、失敗を恐れずにいろいろなことに挑戦できます。
自分が何をして人の役に立てるか、どうやって生きていくかもしっかり考えられます。

4.良い仲間と切磋琢磨できる

検査をくぐり抜け、力のある子が集まります。おそらく先生も、優秀な方が集められます。この中で、切磋琢磨できる。いい環境です。

ただ、公立の中高一貫校に入るのは、最終目標ではありません。入ったあとでどうするか、が大切です。
入学した後、まわりに流され、勉強もせずに、探求学習もしっかりせずに過ごすと、6年後は、たいへんな事になります。
大学に受かる学力もないし、総合型選抜入試に通る自己深化もない。

公立の中高一貫校は、自分をしっかり持った子が行くと、とても合っていると思います。学校の先生に何かしてもらうのを待つのではなく、自分で必要なことを考えて実行する子があっています。愛知県の資料にもあるように、公立の中高一貫校で学ぶ中で、愛知・日本・世界を支える人材になっていくことができると思います。